映画やドラマなどで、恋人や子供が両親の誕生日などの特別な日にベッドルームに朝食をトレイにのせて持ってくるサプライズをみたことがありませんか?
ベッドの中で朝ごはんを食べることを、英語圏では「ブレックファスト・イン・ベッド」と言います。
日本では、あまりない習慣かもしれません。
私がそれを初めて知ったのは、デザインを通じてでした。
アイリーン・グレイというデザイナーがデザインしたテーブル「E‐1027、海辺の家」というのがあります。
アイリーン・グレイは、1879年アイルランドに生まれた女流デザイナー。
このテーブルは、南仏ロクブリュンヌの海岸にある「E‐1027、海辺の家」と題されたリゾートハウスのためにデザインされたサイドテーブル。
6mmのガラスの天板とスティールパイプで構成され、テーブルトップの高さは546mm~956mmまで調節可能。
ベッドのマットレスにちょうどコの字型で挟み込むことができます。
リゾートハウスではベッドサイドでの朝食用テーブルとして使われていました。
この当時としては、素材も画期的でしたが、「ベッドで朝食をとるためのサイドテーブル」という発想が斬新でした。
しかし、この時代はおそらく「ベッドで朝食なんて、だらしない」という風潮もなきにしもあらず。
実際に、賛否両論だったようです。たぶん男性どもの妬みもあったはず。それは、映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」に描かれています。
その後、「ブレックファスト・イン・ベッド」が映画やドラマで見られるようになったということは、その行為が人の深層にある憧れだったのかもしれません。
ベッドで朝食をとるというのは、王族などの特権階級のイメージが強く、一般の市民ができるようなことではないという意識が強かったのではないでしょうか。
このテーブルを通じて、デザインというのは、人の意識も変えてしまうすごい力を持っているな、と思った作品の一つです。
朝食をベッドでとるということを実現させてくれるこのテーブルがきっかけかどうかわかりませんが、今では、30センチほどの高さの足付きトレーをたくさん見ることができます。
トップにある写真中のMOLFOのブレッドバスケット「デネブ」は、焼き立てのパンをできるだけ美味しいままに食べたいという思いから、作ったパン用のバスケット&バッグです。「ブレックファスト・イン・ベッド」も頭のどこかにありました。麻自体、通気性が良いので、
- 焼き立てのパンの熱気をうまく逃してくれる。
- 乾燥を防ぐ。
- プラスティックのように湿度でクラストのおいしさを損なわない。
などの利点がありますが、それにプラスして、
- 温めた穀物をいれるポケットが底の部分にあり、パンの温かさが持続する。
- バッグとして持ち運べる。
- ふたがわりにもなり、ホコリなどから保護できる。
- 収納やお洗濯が簡単。
という点も兼ね備えています。
日本では、ベッドで朝食を摂る習慣はあまりありませんが、ホテルなどでのお部屋で朝食を摂る際やガーデンでのお食事などに使ってもらえたら嬉しい。
それにしても、美味しい焼き立てのパンをベッドにまで誰かが運んでくれるなんて、何か素敵だと思いませんか?
少なくとも、誰かの「LOVE」が根底にある。
それがいいんだよね。
そういう思いが充満すれば、世の中はもっと良くなる。
デザイナー
HIROMI KIM
写真で使用しているのはこちら
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