[デザイナーズコラム]オルトレ・ディ・ラ

[デザイナーズコラム]オルトレ・ディ・ラ

2020年9月13日
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先日、東京都現代美術館で開催しているオラファー・エリアソン展「時に川は橋となる」に訪れる機会に恵まれました。

彼の作品は、感覚や知覚を探究し、体験することが持つ意味を問い直すような作品で、写真で見るだけでなく、体験したいと思わせます。

そして、近年は、アートを介してサスティナブルな世界の実現に向けた試みを多く発表しています。

東京展では、約17作品が展示されていて、機械の故障で楽しみにしていた「ビューティ」の作品が見れなかったこともあったけれど、日本では何十年かぶりの彼の展示会は、このコロナ禍においてさえ、来場者が絶えない様でした。また、子供から年配の方まで来場者の世代を超えた客層は、アートを超えた魅力があることを証明しているようでもありました。

 

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グリーンランドの氷河の氷で制作された水彩画や、ソーラエネルギーが生み出した光と幾何学からなる制作物、アイスランドの氷河・溶岩・流木といった自然物でできた制作物や、studioでのサスティナビリティの研究室の数々は、アートという分野に関心がない人にでも楽しめる一種のサイエンスエンターティメント的な要素を併せ持ち、子供でも楽しめるし、実際に楽しく遊んでいた子たちが多かったのが印象的でした。

使用している素材やモノ、知覚のさせ方に彼の強いメッセージが込められていて、一つ一つの作品を見ていくと、本当に深くこの世界を愛している人なのだと改めて感じました。

オラファー自身のメッセージが展示会場に掲載してあったので、その一部を抜粋します。

人間は日々、二酸化炭素を排出しながら生きています。たった一人でできることには限りがあります。各国の政府機関や国際社会は今、気候変動問題に真剣に取り組むべきです。しかしその実現のために私たちは皆それぞれの分野から可能なレベルで働きかけなければなりません。今こそ地球に代わって行動を起こすときです。

オラファー・エリアソン

 

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「それぞれの分野から可能なレベルで働きかけなけばいけない」


という言葉には大いに励まされています。

私が初めてヘンプの特性を詳しく知ったは、MOLFOを立ち上げる少し前。

コットンと比較すると、4倍の耐久性があり、栽培するための水の使用量は約2分の1、同じ耕地面積で2倍の収穫量があり、農薬不必要、たったの100日で育ち、土壌改良までしてしまい、さらに種子は非常に栄養価の高い食用とすることができ、全てが産業利用できるという万能な植物。

欠点が見当たりません。

これほどサスティナブルな世界に貢献できる素材でありながら、今まだ知る人ぞ知る稀で入手困難な素材。

さらに、驚くべきことは、神道や皇室とも深い関わりがあり、神の依代(よりしろ)とされ、太古の昔から日本人が大切にしてきた繊維、ということを知っている人が少ないという事実。

今まだ現代においても日本での入手は難しく、コスト面での戦いは続いています。

 

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マーケティングの世界では、4p (product, price, place, promotion)が重要視されます。その中でもビジネスをしていくにおいて、プライスはとても重要なファクターで、この設定いかんで、ブランドの立ち位置から売り上げ、流通、ターゲット層から販売サイトまで何もかもが変わってきます。そんな根っこの部分を牛耳られているのは、大麻がドラッグとして認識されているからに他ならないと思っています。(*1)

本来、日本にあった大麻(おおぬさ)は、ドラッグとしての使用が目的ではなかったので、幻覚症状を引き起こすTHC成分がほとんどない種類だったにもかかわらず、戦後GHQによって、ドラッグと一括りにされ、また精神的な拠り所とする神道との関わりを断ち切る為もあってか、禁止されてしまって、それまであった麻農家が立ち行かなくなってしまったそうです。

ということは、戦前は、サスティナブルな世界を実現できる土壌だったということになります。

 

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プラスチック製買物袋有料化 が2020年7月1日スタートしてから、生活の習慣が少し変わったように思います。法律のような強い強制力がないと、人は便利な方に流れてしまいがちになり、それを制するのは、知識や強い意思。

ドイツでは、自然環境に良いエネルギーやものに対しては、コストが高くなってもそちらを選択する人の割合が高額所得者になるほど多いと聞いたことがあります。

高額所得者でなくとも、意識の高いライフスタイルを送っている人はいるわけだけれど、コストが関わってくるとなかなか知識や意思だけで理想のスタイルを送るわけにもいかなくなります。

ヘンプのコスト問題は、まだ続きそうで、今まだ制作物や作品色の濃いMOLFO製品ですが、それらを通じて多くの人に知ってもらうきっかけになればと思います。

そして、それ以上の展開ができるような世界になれば、地球はほんの少しだけ健康を取り戻してくれるかもしれないし、私たちの生活の中で笑顔が増えるかもしれないと考えています。

最後にタイトルの「オルトレ・ディ・ラ(Oltre di la)」とはイタリア語で「それ以上」という意味。英語で言うと、「beyond that」。「それ以上の私たちの新しいライフスタイルに向かって帆を進めていこう」と言う意味を込めています。自助努力ももちろんしていくつもりですが、これからも応援して頂けるととても嬉しいです。

 

Hiromi Kim
ヒロミ キム

 

(*1)大麻にはいろいろな呼び方があり、主に繊維のことをヘンプと呼ぶ。

 

MOLFO製品を積み上げた写真。ソフトスカルプチュアーと呼ぶ方もいます。上から順に、Rigel B, Rigel, Hadar, Capella mini, Capella。

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